ターニケット(救命止血帯)&血液媒介病原体 講習


救命止血帯(ターニケット)使用法を含めた外傷による出血対応に特化した応急処置を学ぶ2時間半のオリジナル・プログラムです。

出血によって命を落とすメカニズムを理解し、応急処置の基本となる直接圧迫法止血に加え、軍用ターニケットを用いた止血帯緊縛法による出血コントロールの練習をします。

BLS横浜のこだわりとして、出血多量による循環血液量減少性ショックへのファーストエイドと、米国連邦労働安全衛生局OSHAスタンダードに基づく血液媒介病原体への理解、つまり血液感染対策についても、しっかりと時間をかけてお伝えします。


ターニケット(止血帯)&血液媒介病原体 講習開催予定

開催日
場所
時間
募集状況
8月13日(木)
横浜駅 徒歩5分
9:30-12:30
締め切りました


救命止血帯ターニケット使用法と血液感染、ショックファーストエイド講習 by BLS横浜



ターニケット(止血帯)の使い方自体は簡単です。しかし…

技術、使用法という点にかぎって言えば、ターニケット(救命止血帯)の使い方は簡単です。

しかし、難しいのは「止血帯を使用する」という判断と意思決定、そしてターニケット装着後に起こるできごとへの対応にあります。


止血帯教育廃止から、推奨に転じた経緯

2005年の救急蘇生法の指針の変更で、日本の救急法からは止血帯法(三角巾使用)が消えました。この10年間以上の間、日本国内では止血帯は教えられていませんでしたが、2019年から既成品の軍用止血帯(ターニケット)を前提とした止血帯法が復古することになりました。

応急手当しては一度は否定された止血帯法が復古したのは、アメリカ軍によるアフガニスタン等での戦闘での使用実績が関係しています。

止血帯(ターニケット)の有効性には医学的なエビデンス、つまり科学的根拠があるとされますが、それは 戦場という特殊な環境下で、訓練を受けた軍人 による実績データである点は理解しておく必要があります。


止血帯(ターニケット)の適応と使用判断

言うまでもなく止血の基本、ファーストチョイスは直接圧迫止血法です。まずは直接圧迫を行い、それでも生命危機が迫っていると判断した場合に限り、止血帯の使用を検討します。

一方、ター二ケット教育のベースとなっている兵士・軍人向けの指導では、四肢を撃たれた場合は、条件反射的にター二ケットを自分で巻くように訓練されています。出血の状態を評価する余裕はなく、銃創や切断に近いような重傷が前提だからです。

この点がターニケット使用の市民向け教育とは異なる部分です。日本における他者に対するファーストエイドでは、止血帯はやむを得ずに使うものであり、戦地のような積極性があるものではないということです。

そのために、本講習では直接圧迫を基本とし、アセスメントに基づいた緊急避難的な処置としてターニケット(止血帯)を取り扱っていきます。


ターニケット(止血帯)により起こる合併症の理解

ターニケット(止血帯)は生きている人間に対して施行するという点で、心停止を前提としたAEDとは根本的に異なります。AEDは仮に間違って装着したとしても対象は心停止状態である以上、それ以上の悪化は論理的にありえません。

しかし、ターニケット(止血帯)を装着する対象は生きている(活動性出血がある=心臓が動いている)人であり、判断を誤れば余計な合併症を引き起こし、不必要な四肢の切断や神経麻痺を招く恐れがあり、高カリウム血症による心停止などの危害をもたらす可能性すらあります。

ゆえにAED使用教育とは違い、ターニケットのテクニカルな使い方/使用法を知っているだけでは不十分で、合併症と失血死の病態生理を含めた医学的な知識がない人が、ターニケット(止血帯)を使うべきものではありません。

また、止血帯(ターニケット)を巻いたら30分ごとに緊縛を緩めるという昔の指導がそのまま流布している現状があります。止血帯を巻くことで体内で起こるリスクについて、最新の正しい知識を持っている必要があります。


ショックの理解と対応

出血多量で命を落とすとしたら、それは循環血液量減少性ショックによるものです。「ショック」という病態を知らずに止血帯(ターニケット)の使用方法だけを学ぶというのはファーストエイド的にはありえません。

  • 人はどれくらいの血液を失ったら死ぬのか?
  • 危機的な出血をすると、人の体はどんな症状を呈するのか?
  • 止血が間に合わない場合、なにかできることがあるのか?

これらの理解なしに、ターニケットの使用法だけを学ぶことはナンセンスです。

本講習では、ショックの病態生理を理解し、ターニケットを装着する止血以外のファーストエイド対応についても言及します。


血液感染対策

ターニケットを使用する状況というのは、活動性の出血がある、つまり手足を切断したような激しい出血がある状況です。救急法の原則は、自分の身の安全確保が最優先。すなわち感染防護手袋等を装着しない限り、傷病者に触れることはできません。

日本の自衛隊や消防は、米国陸軍に習い、ターニケットを配備するようになりましたが、米兵は米国労務省職業安全衛生局(OSHA)の法規制により、血液感染対策ということで血液媒介病原体(BBP:Bloodborne Pathogens)講習を毎年受講することが義務付けられています。

血液の何が怖いのか? 病原体の侵入経路は? どうしたら感染を防げる? 血液被爆したらどうする? 血液汚染の正しい清掃法、血液被爆後の報告、など、米国法定講習のBBPの内容も本講習内ではお伝えしていきます。




予定内容:ターニケット(止血帯)&血液媒介病原体講習

  1. 人が生きるしくみと命を落とす機序
  2. 出血の病態生理
  3. 直接圧迫法
  4. 血液を介して感染する病気とその対策(血液媒介病原体対策)
  5. 止血帯(ターニケット)使用法
  6. 循環血液量減少性(出血性)ショックの病態生理と、そのファーストエイド
  7. 市民が行う医行為の法的問題と教育の課題

※血液媒介病原体に関しては、米国労働安全衛生局OSHAスタンダードの内容を網羅しますが、資格証の発行はございません。

※止血法とショック対応については、BLS横浜の ハートセイバー・ファーストエイドG2015 を受講された方には既習内容となります。




止血帯/ターニケットの日本国内での教育普及の課題については、BLS横浜ブログ記事もご参照ください。→ 止血帯(ターニケット)使用トレーニング考、他




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